「すまん。先に行っていてくれ」
独特な匂いがして立ち止まると、渡り廊下に二つの影が見えた。
背が高い男の人が自分の腹のあたりの制服を摘まんでいる。顔は、後姿だったから見えなかったけれど、声も表情も固そうだった。
「ごめんね。油絵なんてしたくもなかったのに、私に付き合って」
「良いから、先に行ってくれ」
付き離すその声の余りの冷たさに、声を掛けていた小さな女の子は、パタパタと走り去って行った。
「……落ちるだろうか」
不安そうなその声に、思わず利香は飛び跳ねていた。
「いって」
途中、誰かの寝ている足を蹴っ飛ばしてしまっていたけれど、気にせずに跳ねる。
「それね、完全に落とすのは無理だよー」
渡り廊下で佇む巨人さんにそう言うと、利香は思いっきり睨まれた。
「なんだと」
「でも、今なら凄く薄くは出来るよ」



