「あれ? 利香」
音楽部は、温室の隣の特別棟校舎の三階。一番日当たりの良い部屋で、様々な楽器を持った先輩達が既に新入生に紹介していた。
その中で一際、人を集めていたのはみなもだった。
美人で可憐で儚げで、皆が話しかける中憂いを帯びた濡れた瞳は人見知りの為に伏せ気味だ。
「なんでみなもちゃん、居るの? レスリング部は? 野球部は?」
「野球部はマネージャーは試験があるんですって。家事経験ないし、一年だけで応募が30人もよ! レスリングは、――今は試合に集中したいからのマネージャーお断りですって」
ハンカチを取り出してしくしくと泣いているみなもの回りには、椅子を持ってきたり飲み物を持ってきたりと甲斐甲斐しい細めのイケメン達が続々出現中だ。
けれど、みなもの視界には野菜ぐらいにしか見えていないはずだ。
「で、音楽部に?」
「うん。ピアノとヴァイオリンと悩んでる。お家でも稽古してるからどちらでも良いのだけれど」
みなもの家は父がオーケストラの指揮者で母ピアニスト、兄が父が嫌がり飛び出した実家の寺を継いで住職、そしてみなもちゃんもヴァイオリンの稽古を一日何時間もしている、音楽一家のサラブレッド。



