「なんで……歩夢くんはそんなに簡単に言うの? お兄ちゃんの秘密を知っていれば、分かるでしょ? 自分がお兄ちゃんの立場だったら誰に助けを求めるの? 助けてくれる人なんていないよ。私しかできないもん」
利香の変化に気づいたのか、賢次郎とみなもが振り返る。
いつも元気でウサギが跳ねるような印象の利香が小刻みに怒りで震えている。
ワナワナ震えているのを、歩夢が冷たい眼差しで見てくる。
利香にはその冷たい瞳の意図が分からず、兄の置かれている状況を知っていながら平然としている歩夢の方が信じられないでいた。なんで。本当にお兄ちゃんに意地悪したいだけなのか、と。
あんなに頑張っているのに、お兄ちゃんに何故?
そんな思いが過る。
「あのな、俺は、お前に頑張りすぎるなって言ってんの」
「じゃあ私が頑張らなきゃ、誰が頑張るのよ!」
「俺を頼ればいいだろ?」
そんな簡単なことも分からないのかと、歩夢がデコピンすると良い音が鳴った。
「お前のその何でも自分が自分がって前に出る所、輝夜よりムカつくかも。昨日みたいに勝負挑みやがって」
歩夢の表情は怖いけれど、これは心配してくれてるのだと分かる。
利香が自分の気持ちは、って改めて問われたら、入学してから今日まで私は自分の目標を達成しようと躍起になってて感情は忘れていたのだと気づかされた。



