彼女の名字は兎輝。その名前のごとく、入学式は人に抱えられ入場し一日目はパンを食べたいからと遅刻し、部活のし過ぎで愛が足りないと恋愛部を発足。

彼女の行動はいつも奇抜で、まるで三月兎の様な毎日お茶会をしては奇妙な行動をする破天荒な子だ。

 そんな彼女も恋をするのかと、地区予選の野球会場で声を枯らしてまで彼女は彼の優勝を信じ叫び続けた。


「あはは。今度は何なんでしょうか」
 綾小路は昼休みの長閑な時間を、珈琲一杯でのんびり過ごしていた矢先だった。中庭を、大勢の生徒が通っている。窓から眺めていたら、利香は先生を見つけ手を振った。

「せんせー! 今から理事長に殴りこみに行きますが、一緒にどうですか!」
「殴り込み?」
「利香、直訴だろ」

 近衛に窘められた利香は舌を出す。その二人の心の通じたやりとりは見ていて心が温かくなる。

「あはは。直訴ですか。本当に貴方って面白いですね」
「何言ってるんだ。先生も来てよ」
「お願い致します」

 全生徒に声をかけ回っているみなもと巴が現れた。
 綾小路が振りかえる前に、珈琲を巴に奪われみなもに腕を引っ張られた。


「仕方ないですね。責任は負いませんからね」
苦笑する先生と、いつの間にかそれぞれの部長の考えに賛同した全校生徒もその後を追う。

「――ふう」
 利香は、歩夢、輝夜、そして近衛の顔を見て大きく息を吸い込むと理事長室を大きく、大きくノックした。【完】