「放送してすぐに身を隠そうと此処に上がったんだよ」
「――とんでもないことを、何もこんな忙しい時期にしなくてもいいじゃないか」
「ううん。もう今しかタイミング合わないんだよ。仕方ないよ」
利香はグラウンドの野球部を見ながら頬を染めた。
「お兄ちゃん、私ね、毎日わくわくする。最初は、色んな勝負に勝とうって思う気持ちが毎日興奮してわくわくをくれたんだけどね。今は――響也先輩が頑張ってる姿を見るとドキドキする。毎日、ドキドキする」
「利香・・・・・・」
「この気持ちって、お兄ちゃんの気持ちを取り戻すうえで大切な事なんだと思う。お兄ちゃんは、歩夢君、好き?」
利香の直球な言葉に、歩夢は木の上でへたり込みながら、首を傾げる。
「恋愛感情というのならばない。俺は、身体は女かもしれんが環境が俺を男として育てた。友情としてならば、手を焼くが愛い奴だと思っている」
家が隣だと言うだけで、小さな頃からずっと一緒に居た。
中学の時だろうか。一緒に眠った夏の暑い夜。胸に巻いたサラシが厚くて輝夜が無意識に緩めてしまったのだろう。一緒に眠っていた歩夢に気づかれたのだとしたらその日しかない。
「じゃあ、一回、落っこちてみようよ。甘くて息を吸うのも苦しくなって、――心から溢れて止まらなくなる恋に」
「利香?」
トンっと胸を利香に押された輝夜は、木の頂上付近だった場所からバランスを崩し背中から落ちていく。
背中から視野を奪われて落ちていく。まるで相手を何も知らずに落ちていく恋の様に。
「輝夜!」



