「も!? 揉むな! そんな時は自分の頬を抓るんだ! い、いつ揉んだんだ!」
パニックであわあわする輝夜を見て、遠くから千昌も走り寄って来た。
「あの時の衝撃と――お前のことをあの時からずっとどうしてやろうかと狙っていた俺の気持ちをそろそろ受け止めてもらおうか」
にんまりと笑う歩夢の笑顔に、輝夜は身の危険を感じた。歩夢の笑顔は、まさに狼。兎なんて簡単に食べてしまいそうな余裕を浮かべている。
「ち、千昌、助けろ」
「お断り致します」
千昌の後ろへ隠れよとした輝夜は、千昌によって前へ引きずりだされた。
「千昌!」
「貴方もそろそろ観念してしまいなよ」
その言葉に、背後に忍び寄る歩夢の気配を感じ、輝夜は逃げ出した。
「おい、逃げんなよ!」
だが、一度、歩夢の目が狼に見えてしまった輝夜にとっては、捕まることは未知の恐怖が待っている。
「待て! 俺と勝負しろ!」
二人の追いかけっこは美術室の前を通り、美音を驚愕させる。
「逃げるのか、俺の不戦勝なら全部見せてもらうぞ!」
サッカー部と野球部の練習しているグラウンドを横切り、危ないと近衛に注意され。
「負けを認めろ! 兎輝 輝夜(かぐや)!」
音楽室の窓から入り、竹鶏の悲鳴をバックに廊下へ逃げながら、全校生徒が二人の追いかけっこを目撃してしまっていた。
『えーこほんこほん。マイクのテスト中です』利香は生徒会室をジャックして、ある勝負内容を提案した。『公務部より生徒会へ勝負を挑みます。生徒会員は全員で私を捕まえて下さい。公務部は歩夢君だけが生徒会長を捕まえて下さい。どちらが先に捕まるか、鬼ごっこ勝負です』



