三月ウサギは恋をする!?


「利香」
「利香っ」


 悲痛な兄と、大声で不満を叫び憤りを理事長にぶつけるだけの愛しい親を見ながら利香は一瞬言葉を失う。

「お兄ちゃんは、今までずっと私のお兄ちゃんだった。お母さんたちだってお兄ちゃんが男だって気づくのが遅れたんだから、今さらすぐにはこの状況は打破できないんだよ」
 利香は自分の方が正当なる後継者だと自負している。輝夜の父親は誰かも分かっておらず、自分は理事長も認める父親を持っている。

「だから、私、お兄ちゃんの座を奪って男で居る理由が無くなるような状況に追い込もうって思ってる。酷いことをしてる自覚はあるけどでも、――酷いことをして強制的に命令しなきゃ、お兄ちゃんはもう自分の意思じゃ変えれる状況じゃないの」

 利香が兄の腕をぎゅっと握った。輝夜も、自分にしがみ付く利香の手を強く引き寄せた。

「つまり、女になることが怖い。――女としての自覚が芽生える気もしないってことだよな」
 利香と輝夜の後ろから現れたのは、歩夢だった。

「輝夜、お前、俺と勝負しようぜ」
 歩夢は、頭に巻いていたタオルを解くと空高く放り投げた。
「勝負?」

 この状況で、空気の読まない歩夢の発言に、輝夜は嫌悪感を露わにした。

「そ。お前が勝ったら、お前の全てを見せてもらう」
「す、全てだあ? ちょっと範囲が広すぎないか」
「うっせ。覚悟決めろよ。俺は中学時代、お前に胸があるのをびっくりして、夢かもしれないと何回も揉んだんだぞ」