「あはは。先輩達を応援したからに決まってるじゃないですか」
掠れて、上手く声が出ない利香が、喋った瞬間ぴりっと痛んだので喉を押さえる。
「そうだったな。ありがとう。今日、一番お前の声が聞こえてきた。プレッシャーに乗り込まれそうな客席をお前が変えてくれたんだよな。――その声で」
近衛は、ふわりと利香を簡単に抱きあげた。
「先輩、肩っ」
「ありがとう。――御礼を言っても言い足りないぐらいなんだが、悪い。自分へのご褒美を貰ってもいいだろうか」
「ご褒美? 何が欲しいんですか」
近衛がそんなことを言ってくるのは初めてだった。近衛も優勝で興奮を隠せないのかもしれない。
「兎輝 利香」
「へー―んんっ」
利香が尋ねる前に、近衛の唇と自分の唇が重なり言葉を封じられてしまった。それは、優しく啄む、青春の様な一瞬のキスだった。
「せ、先輩?」
「甲子園もお前の応援が欲しい」
「ふぁ」
利香の顔が破綻した。
「ふぁ、ふぁーすときすだったのにい」



