三月ウサギは恋をする!?



 菫がピッチャー交替で響也が投げるのだと教えてくれた。利香もそれを息を飲んで見守る。その時、近衛はポケットから御守りを取り出したのだ。響也は御守りを、取り出しぎゅっと握りしめ目を閉じる。まるで祈るかのように。  


 その姿に誰もが息を飲み胸が締めつけられた。近衛はずっと一人、自分と耐えしのぶ戦いをしてきた。ずっとずっと、話を聞くだけで、あまり自分のことは話そうとはしない。

一人で耐え忍んでいたんだ。誰が響也の話を聞いてあげてたんだろう。今、孤独を御守りで耐えている近衛に、何も出来ないにかと利香は手に力を込める。響也は悪役じゃない。
響也は、皆のヒーローだ。真夏の青空の下、皆を甲子園に導くヒーローなんだから。

「響也先輩!」

 好きだと、利香の全身が叫んでいた。響也が好きだと。一人で背負う、不器用な貴方が好きだと。青空を誰よりも夢見る不器用な響也に、大切だ、傍に居るって、伝えたい。
「響也先輩、いっけー」

 蝉の声が消える。歓声も、解説の声も。大物ルーキーに、近衛はストレート三振を奪った。

全開の自分を乗り越えるために、仲間にも自分の為にのなるように。次にバッターボックスに近衛が立った時、二人が睨みあうのをもう取材陣も文句を言うのを止めていた。