「出てきていない?」
「大物ルーキーなんかと戦わせるかと、馬鹿にして月華はエースを下げたのかってすごく反感かってるそうだよ」
「確かに。何さまだよ。向こうは三年間、仲間にも内緒にしていたんだぞ」
違う。利香は思いっきり叫びたかった。違う。違うのに。近衛が今まで頑張っていたのは、四月からしか見ていない利香さえ分かっている。ベンチで数分眠ってしまうほど疲労していても、肩の痛みも酷くても。
近衛は真っ直ぐに、足元の石さえ存在を感じながら、懸命に青空目掛けて頑張ってきた。
「皆! 声が小さいぞ!」
利香は、声が、喉が裂けてもいいと大声で叫ぶ。
音楽部の、ラッパを奪うと空目掛けて大きく鳴らした。応援団の中に居た賢次郎もシンバルを奪い、歩夢も太鼓を奪い、めちゃくちゃに演奏した。滅茶苦茶な演奏に注目した皆を確認すると、利香たちは演奏を辞めて、客席に立った。
「聞いて! ちゃんと皆、聞いて!」



