三月ウサギは恋をする!?



 ぺたんと座り込みながら、その絵をただただ見上げる。利香の瞳から、一滴の涙が零れた。どうしたらこんな風に綺麗な青が描けるのだろう。どうすれば、こんな風な青い空を夢見ることが出来るのだろう。

この憧れる空の真ん中に、花よりも兎を描いてくれたことが、嬉しいと素直に思えた。自分は、人の気持ちも分からず、勝負で聞きだす事でしか理解できないような馬鹿で無鉄砲で、騒ぐだけなのに。こんなに綺麗な人の視界にどんな風に映っているのか怖くなる。

兄を思い、兄が傷付いてもこの今の現状を打破しようとしている自分勝手な自分。苦しいのも自分のせいだ。なのに、利香を認めてくれた。利香が放送で呼び出され、息を切らして走ってきた。利香のリボンを欲しいと言った。

「――利香」

 美術室の前で窓の外から覗くのは、歩夢だ。授業中のはずなのに、廊下で歩く音がする方がおかしい。そんなのは、サボっている歩夢ぐらいのものなのだろう。

「歩夢君、私、苦しい」
「そうだな。見てりゃわかる。ずっと分かってた」
「歩夢君」
「お前が無理するぐらいなら俺が何とかしようと、此処であいつをずっと邪魔してきたけど、もうお前も楽になってしまえ」