三月ウサギは恋をする!?



「んん。 そのままの先輩で居て欲しいかなっ」
何を望んでも、やはり自分で掴み取りたい。

「驚いた。同じ学園にそのような状況に立つものがいるとは」
「そうでもないような? 綾小路先生とかみなもちゃんも。それに菫先輩たちも、千昌
先輩たちもきっと色々抱えててそれでも楽しい事の方が多いから笑ってるんだよ」

 現実は時に真実を突き付けられるの非情な部分もある。嘘や謎で隠しても、それは簡単に引き剥がしてしまう相手現れる。愛情や、友情、相手を慈しむ気持ち。

「へへ。近衛先輩なら言えるッて気がしてた。でも、気持ちが電線しちゃったら嫌だから、本当にこのままでいてね」
「……お前がそう言うのならば」
 近衛は、一人で頑張りたいと言い張る頑なで純粋な利香の気持ちを見守ることにした。
ずっと胸に秘めていた気持ちを始めて言葉にしたので、利香もまだ身体と心が震えていた。近衛が授業へ戻ってしまっても、利香は戻る気持ちになれずに、そのまま美術室へ侵入した。

今朝、美音が窓の鍵を締め忘れているのを、ばっちり目撃していたのだ。温室の鍵は、当番でたまたま持っていただけだったが、ここだったら誰も入って来ない。

窓から侵入すると、誰かの廊下を歩く足音がして慌てて飛び降りた。お尻を強打し押さえながら見上げると、油絵の独特な匂いが鼻を掠める。真っ青な空を、兎が跳ねる油絵。

兎が跳ねた瞬間に、空の雲が画面から押しだされてしまったような真っ青な空と兎。そして、取ってつけたような花畑。温室で花を描いているのだから、描かない訳はいかないと律義に描いたのが伺える。

纏まりもないが、描いた本人の真っ直ぐな心が映し出されたような、そんな絵だった。