兄は、誰も引き取らなかった自分を引き取った理事長に感謝していると、自分のこの今の状況を怨むことは無く感謝していると、利香の髪を撫でながら言った。
利香の親に説得されても意固地になって貫き通そうとする輝夜は、健気だが今さら普通には戻れないと諦めているようにも感じられた。
「だから、私がこの学園の後継者になるって理事長に宣言したの。お兄ちゃんでさえ部活動の入部者数100%無理だったでしょ? だからお兄ちゃんが無理だったことを私が全部やり遂げたら、私を認めるしかないからね」
「それは、長く険しい道ではないのか」
「そうでもないよ。私、諦めないもん。先輩みたいにこの世には良い人の方がいっぱいって分かってるし。それに、私は悪かもしれない。お兄ちゃんは今さら自分を取り戻すのはきっと苦しいんだもん」
「分からん。分からんぞ。俺は今、怒りで身体が震えている。俺が理事長の性悪根性を叩き直してやる!」
「無理だって。理事長に進言したいなら甲子園で優勝して、ぐらいだよ。あの人、結果しかいらない人だし。でも、先輩の甲子園への気持ちは、そんな人を憎むためや進言する為のものではないよね?」
利香が尋ねると、近衛は頷く。そして震えている拳をつよく握りしめた。
「お前は、それでも笑顔を貫こうとするのか。俺が何か手助け出来ることはあるのか?」



