三月ウサギは恋をする!?



「あ、はは、歩夢君って冗談が下手だよね、何だろソレ」
近衛はまっすぐに利香へ歩いてくる。近衛のこの性格を利香は羨ましく、時には尊敬もし、憧れてもいたが、今はそれが重く感じていた。

「お前の抱えている秘密は、一人では重たくないか」
「一人じゃないよ。歩夢君も千昌先輩も知ってる。私も中学まで知らなかったけど」
「――は?」

「お兄ちゃんは、うちのお母さんのお姉ちゃんの子供なの。生まれてすぐにお姉ちゃんが死んじゃったから理事長が育ててたの」
 今度は近衛が首を傾げる番だった。

「うちの両親も理事長とは縁切ってたから、どうしてもお兄ちゃんを理事長から引き剥がそうと頑張ってたんだけどね、あの家に無理矢理帰って来た時にはもう遅かった。私もお兄ちゃんも小さい頃よ。覚えても居ないような――小さな頃」
 薔薇の刺を見て、利香は微笑む。自分を守るには刺ぐらいあるべきだと。

「物心着く前からお兄ちゃんは跡取りの男として育てられてて、私も男だと思ってたよ。だから、お兄ちゃんは今さら女の子に戻るのもきっと苦労するし周りになんて噂されるか分からないし、恋愛なんて考えられないし、今の状況も女の子に戻っても、苦しいよ」

「この世の中で、そのような行為、許されるものか! これは幼児虐待とも捉えられるぞ!」

「そうだよね。だから私も、理事長とは関わるなって親に言われて喧嘩してまで此処に入学して来たから、絶対に負けたくないよ」

 小さな頃から自分の面倒を見て甘えさせてくれた兄が、兄ではなくて女の子だと気づいたのは、中学に入る頃だった。
部屋で輝夜が自分の胸にさらしを巻いているのを目撃した時だった。兄のはずの輝夜に胸の膨らみがあることに驚き、混乱した利香は部屋に飛び込み輝夜に抱きつき、号泣した。