三月ウサギは恋をする!?


「何故胸が痛むんだ? 二人がお互いを好きならばそれでいいじゃないか。菫は頑固で危なっかしい。意固地になって素直にならない癖に気が強い。笑顔を絶やさない、優しくて強いレオとお似合いではないかな」

 利香が聞きたかったのは、ずっと三人で居たのだからもしや菫先輩が好きだったのか、三人という幼馴染の関係が崩れるのがいやじゃないのか、と複雑な事だったのだが、近衛は分かっていない。
なんで私なんですか。

 利香はその一言だけはどうしても怖くて聞けなかった。嘘を吐かない近衛だからこそ、正直に答えられるのが怖かった。玲音や歩夢のように、相手を気遣い言葉を選んだりしない。だからこそ、真実は時に胸へと突き刺さる。

「そう言えば、油絵に兎を描いた」
「兎を?」
「甲子園で見上げる空を、大きく跳ねる兎を」

 近衛はゆっくり起き上がると、利香を見る。穴が開くかと思うほど、黒目がちな大きな瞳で利香を見る。

「俺は、自分と勝負しても負けそうになってもチームの仲間がいる。試合に勝てば数字が出る。俺は結果が見えるから平気だが――お前は平気か? ちゃんと目に見える結果があるのか?」

「あはは、私ですか。私は、……大丈夫です。結果なんて微々たるものだけど、大丈夫です」
「兎輝」

 正面に座っていた利香は、立ち上がり逃げるように花の前で座り込、む。
「すまない」
「あはは。また謝った」
「いつだったか、靴箱で生徒会長と高梨歩夢が口論しているのを聞いてしまったことがある」

「へ?」
「高梨歩夢は、生徒会長の事を『雲に隠れた男装の――輝夜(かぐや)』と呼んでいた」
 その言葉に、利香の顔色が分かりやすく変わった。
「それがお前が背負っている秘密か」