三月ウサギは恋をする!?



 匿っている様子の美音に、利香は大人しく従い、部室のドアをあけた。

開けると同時に、大きな足がソファから見えた。このソファは先日、美音の父親が美術部に寄付したというアンティークのソファで装飾された肘置きの美しさに、美術部が感動していた。


が、今はその美しい肘置きに近衛の、土で真っ黒な靴下を履いた足が乗っている。寝息も聞こえてきて、目元を帽子で隠しながら眠っている。

甲子園の期待を学園中から背負わされたエースが子供の様な無防備な寝顔な様子で眠っているのだ。

聞きたいことは山ほどあったけれど、椅子を持って来て利香は目の前に座ると近衛の寝顔を見て微笑んだ。この人の頭の中を全て知りたいと、思う。


 どうしたらいつも正しく、いつも迷うことなく自分の考えを信じ、皆を励まし曲がったことなどしない、聖人君子のような振る舞いができるのか。

「近衛先輩は、苦しくないですか」
椅子に座り、太ももに肘を置き、顔を手で支えながら近衛の顔を見る。
帽子を指先で払ってソファの下に落とすと、無邪気に眠る近衛の寝顔が見えた。