『入って来ないでよ!』
泣いて取り乱す菫の肩を両手で掴み、大きく強請った。
『もうお前の足は走れないんだよ!』
玲音に突きつけられた現実に、菫は消えてしまいたいと思った。
だが、玲音は違う。
その場で、ボロボロの一輪の薔薇の花を菫の手に乗せたのだ。
『俺の兄ちゃんが大学で、蒼い薔薇を育てる研究をしてるらしい』
『……うぅ……ひっく』
『青い薔薇がこの世に生まれる前は、『不可能』って花言葉だったんだ。でも今は、その花言葉は『可能』になってる。人が作り変えたから、花ことばも作り変えられた』
玲音は、強く菫の手に花を握らせる。
『走れないってだけで生きるのを諦めるのは違うだろ。今まで生きてきた菫は歩く為に生きてきたわけじゃない。俺達は菫の足になるよ。走れなくても、――菫は俺達の菫だから』



