菫にとって玲音は特別だった。
その玲音を友達とは言え竹鶏に奪われるのは悔しくて――嫌で、悲しくて菫は泣いた。
『大丈夫? 菫ちゃん』
心配して声をかけてくれたのは、陸上部の先輩たちだった。
菫はたださえ車椅子だからと特別扱してきたり、同情的な先輩たちに心の中では黒い感情が渦巻いていた。
それを――今なら逆手にとれると利用したのだ。
またたく間に玲音と竹鶏の噂が流れる中、今度は美音と近衛の噂も流しだす。
一部では、車椅子の菫に近づいて仲良くしているふりをした美音と竹鶏の、耳を塞ぎたくなるような噂もあった。
二人は、好きな人に近づく為に菫を利用したのだと
美音も竹鶏も、菫の気持ちを心配し噂は違うのだと消して回った。
二人の事を幼馴染として大事にしているのを美音も竹鶏も知っていたので、恋愛感情なんて湧いても居なかったのに、だ。
竹鶏が先生を好きだと言う嘘の情報が流れる中、漸く嘘の発信源が菫だと分かったのだ。



