ぽつりと呟いたが、丁度予鈴が鳴った。
「私の試合が終わったら、応援に駆け付けるからね!」
「自分の試合に集中しろ」
冷たく言われた気もしたが、利香はめげずににたりと笑うと、一年の校舎まで猛ダッシュで階段を下りていく。
「凄いよね。野球部の一年だって響也のこと怖くて挨拶だって泣きそうなほどだし。年下の女子は絶対に響也には近づいてこないのに」
玲音は、窓から走り去って行く利香を見ながら、呆然としている。
近衛は慕われ尊敬されているが、その曲がらない真っ直ぐな性格からはっきりと言葉を伝えてしまうので怖がられてしまう場合の方が多かった。
このように、真っ直ぐに見てくれるのは利香と――菫ぐらいかもしれない。
近衛は、机の上のパンの袋をクシャクシャに丸めながら立ち上がると、窓から身を乗り出した。
「兎輝!」
びくっと身体を大きく揺らしながら利香が振り返る。
その顔は、慌てて急いで帰っているのにも関わらず――笑顔で。
近衛は胸を撫で下ろした。
「あいつを頼む。意固地になっているんだ」



