薔薇には刺があった。 美しい花弁に容易に触れられないように、刺があった。 でもそれは、触れば簡単に散ってしまう故に、自分を守らなければいけなかった。 雪の降る凍える川に飛び込み、窓を外し、菫を助け出した近衛。 幼馴染の二人から見ても、きっと近衛は完璧で自分より優れていて、――敵わないのだと認めてしまったのだろう。 それを知らない。 誰にも言わなければ、誰も知らないのと同じことだ。 そう思わざるを得ない。 それゆえの孤独もあることを誰も知らない。