中学三年の最後の試合の日。
その日は、昨日の夜から降り続けた雪が真っ白な絨毯を作っていた。
菫は、引退試合となる最後の試合に朝から胸を躍らせて――注意力が散漫になっていたのだろう。
バスも電車も運行中止だったが、暫くして空が晴れ雪が溶けだした頃にバスの運行が再開した。
そのバスは陸上競技場まで直通で、菫は待ち切れずにそのバスに乗り込んだ。
凍った地面を滑るバス。川に転落したバスは、地面が危険な状態で、なかなか救助が困難で、川に転落しなかったトラックが地面を横断し、更に行く手を阻まれ、バスが川の中で横転したまま数時間が過ぎていた。
自力で抜けだした運転手が大声で助けを呼ぶ。
座席に足を挟まれて、寒い水の中震える菫の為に。
寒い水の中で良かったのかもしれないと、車椅子に乗っている今なら言える。
足の激痛が、刺さるような冷たさに和らいでいたのだから。
その時、玲音は先に陸上競技場に着いていた。
前日に隣の県まで遠征していて、朝一の新幹線で向かい、そちらは雪の影響が少なかったのだ。
「菫!」
凍てつく雪の中、菫を助け出したのは――近衛だった。



