近衛は呆然と歩夢に抱き締められている利香を見て、帽子を取ると頭を下げる。
「すまん。俺が見ていないところでの事故だ」
「あはは。深呼吸してたらボールが口の中に入るところだったよ」
するんと歩夢の腕の中から抜けると、ボールを手渡した。
「どんな人にも、例え年下にも謝るんだね。自分の部の後輩がミスをしたら、毎回近衛先輩が謝るってしんどくないの?」
全部の責任を近衛が感じて謝るのを、尊敬もするが全て近衛が悪くもないと感じた。
ボールなんて、手元なんて狂ってしまう事もきっとあるから。
「俺は、野球部員全てを信用しているし、俺も信用する。信用されたいのならば、俺に着いてきてほいいのならば俺は自分を偽らない。仲間の責任は、まとめ役である部長の役目だ」
また帽子をかぶり直すと、一礼してまたフェンスを登りだす。
フェンスを登らずに入口から入ってきたボールをミスした二年が謝りに来た時には、皆が近衛に釘つけだった。
「あんな男になりたい」
「一生ついて行く」
「あーん。硬派! 超素敵」
男女から歓声が聞こえてくる。
ある意味、真っ直ぐで天然過ぎる近衛は危なっかしくもありそして目を離せない相手でもあった。



