「巴先輩、大学生の彼氏さん居るら良いじゃないですか」
「ああ? 彼氏ぐらい居ても良いじゃないか。なんだよ。利益がない勝負はしないのか」
つまらなそうに唇を尖らせる巴に、利香は近づき周りに聞こえない小さな声で尋ねた。
「美音先輩や竹鶏部長の嘘の噂話が陸上部から出たって聞いたんですけど」
「――」
その言葉に巴が明らかに不機嫌になる。つまりこれは肯定で間違いないのだろう。
「勝ったら、私は何故そんな噂が出たのか知りたい」
「分かった。だが、今このお祭り騒ぎの空気を私も壊したくない。勝負は一旦、陸上部の負けにしとくか」
「――え?」
巴が校門の方から走って来る三人の姿を顎で示す。
歩夢と賢次郎、そして長距離ランナーが、しっかり肩を組んで三人でゴールしているのだ。
どうやら勝負中に何かアクシデントがあり友情が芽生えたんだろう。
応援していた竹鶏が、大袈裟にハンカチを持って泣いている。
「アンタは高跳びで勝ったし。向こうが引き分けならあっちは歩夢と賢次郎二人だし。こっちは一勝もしてないことになるから」
「陸上部がそれでいいならそれでいいです」
利香は交流会が早く始まれるならそれで良かった。



