(私は誰を答えよう)
皆が盛り上がる中、自分だけ居ないというのは無しだろう。そう思うが頭に浮かぶ人物が居ない。
近衛や歩夢あたりを答えておくのが無難で皆に共感してもらえるだろうと腹黒い打算なら浮かんでいる。
だが正直に皆が言う中それは卑怯ではないだろうか。
「次は利香だよー」
にひひと美少女に笑われたならば答えるしかないと腹をくくる。
けれど、――利香が引いたカードはタイミングよく揃ってしまった。
ベートーベンとベートーベン。
壁に何年も貼られ日焼けでボロボロになった古い紙質の方と新しい紙質の方を無意識に選んでしまったのだ。
どんな時でも勝負に勝ちたいと無意識に願ってしまう自分の負けず嫌いさについつい笑ってしまう。
そして……きっと古いカードの方は日焼け具合やボロボロな具合で捲らなくても分かってたはずの綾小路を見る。
綾小路は教育者の顔をして慈しむようにみなもを見つめていた。