「そうですね。私は君たちの卒業を見届けるまでは――恋愛なんて後回しですかね」
先生が、一歩歩み寄ると、床の想像画を捲る。
残念ながらベートーベンとモーツアルトだった。
先生はクスクス笑うとそれをそっと戻し、みなもを見た。
「先生は、軍願寺に学費を援助して頂いた遠縁です」
そう、誤魔化した。
「だから、貴方を見ると感謝の気持ちが溢れて来て止まらない。でもそれは恋ではないのですよ、残念ながら」
「先生っ」
「まあ、卒業したら違うのかもしれませんが今は全く。でも貴方を時折見ることを許して欲しい、かな?」
遠い昔、二人は出会い、会話をした。
それが綾小路の人生を救ったのは、またきっと、別の話だ。
みなもは、胸に引っかかっていた何かがころりと落ちていく。
「だったら逢ったことあるのかもしれませんね。だから、先生を知っていると感じたのかも」
みなもは床のカードをめくると外してしまった。
舌を出しながら立ち上がると、ふんわりと綺麗に笑う。
「好きな人はいませんが、理想は2M120キロぐらいの筋肉質な方です」



