街から離れた山の頂上にある軍願寺の歴史は、古い。
その昔、水軍を率いる有名な戦国大名が、この寺で毎回祈祷すれば、船は嵐に逢わず竜巻を跳ねのけ、神風に守られると言われていた。
今日まで、その言い伝えが浸透し、この寺を手厚く保護する有名な業界人が数多く存在すると言われている。
だが、この寺にも一度だけ後継ぎが出て行き、血が絶たれようとしたことがある。
みなもの父親が、音楽の道を目指し家を重んじる父である住職と長くに渡り対立していた時期だ。
住職は、頑固な息子に家を継がせるのを諦めて――遠縁から男子を引き取った。
その子は、物心着く頃には、洗脳に近い教育でがんじがらめにされ、寺を継ぐ為に生れたような生命感の元、生きていた。
『おんがくをきんしなんてかわいそう』
初めて触れたピアノを、小さな少女に教わった。
彼が大粒の涙を流した時、――住職は自分の行動を恥じ、追いつめられていた事を理解したみなもの父親は、自分の父親と和解した。



