受け取られなかった薔薇が、近衛の手のひらで寂しげに佇む。
枯れ落ちた薔薇は、花弁の先が黒く変色しているワインレッド色の深みのある色だった。
近衛が拾った瞬間、菫はもう拾うのも受け取るのも拒否していた。
「お前は歌わないのか」
「私はもういいの。此処でただただ、太陽を見つめるだけよ。他意はない」
「俺は――あいつがお前のその根性を叩き直してくれるのでは、と信じている」
「あいつって、誰?」
「お前と違って、自分の事を後回しにして他人の為に走り回る兎だ」
「……あの子」
菫の唇が微かに震える。
それが作ろうとした笑顔が上手く笑ってくれなくて失敗したことを意味していた。
「俺は甲子園だけだ。そう言い続けている。それでも気づかないのならば、お前が動くしかないだろう」
「私」
菫は、唇で花を愛でる。
花弁で窒息してしまえば良いのにと、愛でる。
「私、歩夢くんが好きなの」



