玲音と利香が、竹鶏を慰めつつ話を聞いている時だ。
近衛は園芸部の温室へ足を踏み入れていた。
奥の薔薇の咲き乱れるエリアに、一人佇む菫の傍まで歩み寄る。
「竹鶏が泣いている」
「……そう」
菫は、地面に落ちてしまった薔薇を手を伸ばして取ろうとするがあと数ミリ届かず、起き上がった。
「噂なんぞに踊らされて――お前も竹鶏も。うちの朝部の部長も」
「火の無い所に煙は立たぬって言うでしょう?」
近衛が落ちた薔薇を菫の代わりに拾い差し出すと、やんわりと笑い菫は受け取りを拒否した。
「私と響也に噂が立ったのも、火があったからじゃないの?」
「……」
近衛は唇を引き締めて、帽子を深く被り直すと、言いたい言葉を飲み込んだ。それは言ってはいけないと判断したから。
「友が泣いているのに、お前は行かないのか?」
「そうね。こんな車椅子じゃ行けないわ」
「行けないのは、お前が一人で、ぬるま湯の温室に引きこもっているからだ」



