「すまん。助かった」
ウォーターサーバーで顔を洗うと、近衛は頬をパチンと強く叩いてやる気を出す。
顔色はあまり良くないが、目からはやる気が感じられる。
「お前、無理し過ぎじゃね? 本番で本気出せなかったら意味ないしさ」
「分かっている。今日は帰ったらすぐに休む予定だ」
「……朝部も回数減らせばいいのに」
玲音が本気で心配しているが、近衛は頑固で弱音は見せようとしない。
「心配をかけたくないからな」
「はい、タオル」
サッカーの勝負をしようと丁度持っていたタオルを近衛に渡すと、近衛は眉をしかめながら受け取る。
「悪い。お前は――今日の活動は?」
「今日は、玲音先輩にサッカーの勝負を挑もうと思って」
「わ、俺? まじー?」
「うん。菫先輩にがっかりされちゃったからさ、少しでも自分も頑張ろうって決めたの。今、学園に流れてる悪い噂、その噂から恋愛部は解決していこうって思ってるんだ。――あっ」
『菫と近衛は甲子園が終わるまで一時的に別れているらしい』
あの噂も頭を過った。



