「よし。やるぞ。やる。覚悟するべし、玲音先輩!」
利香が体操服に着替え、運動場へ向かっていると、ウォーターサーバーのすぐ脇に玲音を見つけた。
こんなに勝負相手を見つけられるとは思っておらず、意気揚々と近づく。
すると、玲音は利香に気づき、『しー』と人差し指で唇を押さえた後、目線を下へ落とした。
利香も視線を落とすと、ウォーターサーバーのすぐ隣にあるベンチで、近衛が倒れ込むようにうつ伏せになっているのに気づく。
さらに玲音がスマホを取り出して、文字を打ち出した。
『甲子園が響也の夢だから、最近練習超ハードなんだ。10分、俺が見張ってるから横にならせてんの』
そう言えば、入学式以降、近衛に会うとすればいつも薄汚れた野球のユニフォームの時だけだった。朝部でさえ、ユニファームの上からスモッグを着ている徹底ぶりだ。
「……!」
利香は近衛の疲れた背中に後ろ髪を惹かれつつ、玲音のスマホの文章の続きを、タッチし出した。
『私と勝負してくれませんか』



