「綾小路が、一年のミステリアス美少女に熱視線だって」
「あ?」
屋上の鍵を何故か持ってる賢次郎は開けると、屋上の端っこのベンチで寝そべっている歩夢に売れ残りのパンを渡しながら言う。
「どんな生徒にも平等の、教師の鏡って感じのあの綾小路が、ミステリアス美少女に心を奪われたらしいよ」
「ふーん。ミステリアスはどうか知らねえけど、綾小路でも人に見惚れたりするんかー」
起き上がり、売れ残りのフレンチトーストに齧り付く。
柔らかくて、食べた瞬間に甘く広がる卵の味。
学校のパン屋のパンはどれも美味しいので売れ残るのは奇跡に等しい。売れ残るとすれば、賢次郎がヘマして朝練の時間を間違えて売るのが間に合わなかった時ぐらいだろう。
「歩夢が去年、入学一日目で屋上で眠って朝部紹介の時居なくてさ、必死で探してくれてたじゃん。忘れたー?」
「いや。忘れては無いけど」
「俺は良い先生だと思うよ。腹の中じゃあ何考えてるのか分からないのが――気になるけど」



