「先生を見ていたら分かるの。先生の視線はいつも、この子で止まる。瞳が温かくなるの」
「あの、失礼して良いですか?」
「貴方が来てからよ! 私の平穏は乱れ出したの!」
「来てからって、まだ入学して数日なのに」
飽き飽きしていたみなもは、深く溜息を吐く。
音楽部は、人間関係も穏やかでのんびりしている自分に合っていると思っていたのだが、落とし穴を見つけてしまったのだ。
武道の朝部を免除されているコーラス部は、全国大会優勝常連で、朝も放課後も歌の練習をしている。
熱血な竹鶏部長が率いるコーラス部は確かに同じ音楽部内でも空気が違っている。
「じゃあ、私、部活辞めます。馬鹿みたい」
「何よ、そのやる気の無さ! 貴方、音楽舐めてるの!?」
「だからキンキン五月蝿いんですってば」
「二人とも、落ちつきなさい」
殺伐とした空気の中、みなもは竹鶏を冷ややかに睨みつけていた。
おっとりしてのんびり屋に見えるが、笑顔で毒を吐くみなもは、見た目に反して気が強かった。
「先生、おかしいんやない?」



