「先程から先生は私に何が言いたいの?」
理由が分からず、みなもは不機嫌を隠しもせず唇を尖らせる。
美少女と噂されるだけあり、不機嫌な顔さえ可愛らしい。
「ふふ。すみません。ついね、嬉しくて」
「いやあああああ!」
「!?」
二人の会話を後ろから切り裂くような悲鳴が邪魔をする。
廊下の端から端まで届きそうな、甲高い悲鳴。
窓がカタカタと震えた気がした。
「綾小路先生が私以外に微笑まれるなんて……信じられないっ」
その場で自分の肩を抱き締め、回転しながら床へ崩れ落ちる女性。
その女性を見てみなもはにっこり笑う。
「おはようございます。部長」
猫のようなアーモンドアイに、肩まで伸びた黒い髪。
真っ白な肌に鼻梁に、強い意思を感じる引き締まった唇。
音楽部部長、竹鶏 華菜夜(たけとり かなや)。
彼女もみなもに劣らずの美少女だと言えるが、その大袈裟な感情表現と、甲高い大きな声、そしてキツい目付き。
全てが彼女を台無しにしていた。



