「知ってますよ。貴方は昔からそうでしたよね」
「え?」
昔から――?
みなもがそう首を傾げると、綾小路先生はふっと息を吐くように笑った。
「いえ。軍願寺さんの預かり知るとこではないですから」
「……そうですか? そう言えば先生はピアノを専攻されてるんですよね。この前聴いて何故か懐かしくなるような音色でした」
何故か綾小路先生もみなもと一緒に音楽室へ歩き出したので仕方なく当たり障りない世間話を始めたが、先生は妖しく笑うだけ。
その優しげながら意味ありげな視線を、みなもは窓から見える朝練の他の部活を眺め気づかない。
穏やかで慈しむ優しげな瞳。
「貴方は本当にいつも……」
ふふふと笑いながらもその言葉を飲み込んだ。
誰にも知られないようにひっそりと。



