「こ、恋とかじゃなくて、その本当に私、描けない時は描けないの。でもね、夏休みの宿題を最終日に間に合おうのか間に合わないのか冷や冷やしちゃうあのスリル。嫌いじゃないの、私」

「先輩」

「自分は、運動神経ないしドジだし、とりえと言えば、馬鹿みたいに油絵に色を付けることだけだった。だからね、他に何も無いのがたまに凄く不安になるんだ」



美音は、目を伏せる。

千昌を思い、そして近衛の絵を思い出し。

「近衛君の青空の油絵は、私、素敵だと思うの。怖くて面と向かって言えないけど、あの人ってきっと誰に対しても裏表が無いんだなって。あの青ぞらは、近衛くんの心そのものだと思う」


素敵な人だよね、と美音が笑うので、利香も釣られて笑った。




あの青空の様ように晴れ渡る空が来るのを待ちながら