「薔薇…」
口の中で言葉を転がすようにそう言うと、目線を落とす。
「青い薔薇を油絵で描いたことがある。それを……千晶ちゃんは」
美音は眼鏡を外すと溜まった涙を指ではらう。
今日の雨は、美音の頬に流れる。
美音が溜め込んだ涙を代わりに流してくれている。
「そっか。千晶さんは全く考えてなかった。将棋大会行ってるらしいけど気持ち聞いてこようかな。すんなり行くかな」
利香は将棋は少し知識がある程度だ。将棋で勝負を申し込まれたら将棋倒しぐらいしか勝つ自信はない。
「うん。今は邪魔になりたくないからいいよ。その代わり、兎輝くんの理想の学園を頑張って作って、そして千晶ちゃんを戻してあげてね」
「了解です。頑張らねば……!」
一番最初に悪い噂を吹き飛ばしたかったのだが、その道のりは遠そうだ。
「恋患いでスランプかぁ……。そっちは脱出できそうですか?」



