「二重の部活はやっぱ大変ですか?」
朝練もして朝部もすると言うことは、真面目そうな近衛には難しそうに見える。
「大変だが、やりがいがある。得意だけを伸ばし、不得意から逃げるよりは精神向上もできるしな」
「近衛さん、油絵が苦手なんだ」
『運動部の部長、各自準備を始めて下さい』
「あ、千晶さんの声だ」
(入学式にもう部活紹介を入れるのかな? 流石、力を入れるだけあるなー)
利香が呑気にそんな思考を張り巡らしていた。
「油絵は抽象的過ぎて難しい。女の心みたいな」
「へ?」
「美術部の話だ。どうやら皆、俺が怖いらしくて……そちらの方が気が重い」
まだ少し湿っていたけれど近衛はYシャツを羽織り、ボタンを閉める。
「近衛さん、怖くないですよ?」
「ふ」
近衛が嬉しそうに唇を緩ませた。
利香には少なくとも優しそうに見える。無口で硬派なだけで怖い印象はもうない。
「すまない。遅刻だろう。名前を教えてくれたら俺が先生に遅刻の理由を伝える」



