三月ウサギは恋をする!?


雨が風で時折窓にぶつかっては垂れて消えていく。


その面白くもない情景を、美音部長はただただ眺めている。

手に持った筆と、混ぜて濁った油絵の具は、今日はまだ一度も使われてはいない。

油絵具は固まると、筆もパレットも駄目にしてしまうのだが、美音の手が動く気配が全くない。

心配そうに見ていた後輩たちも、自分たちの作品に取りかかると益々自分の世界へどっぷり浸れて身動きが取れなくなった。



「すいません、いや、たのもー」

そこに現れたのは、自分の居場所が迷子のウサギ、利香だった。


「あ、兎輝ちゃん。今日は見学?」

「いいえ。今日は勝負しに参りました!」

「勝負?」

「はい。勝負で私が勝ったら、美音先輩の好きな人を教えて貰おうかと思いまして」

両手をぐーにして、ファイティングポーズを取る利香に、美音は思わず笑ってしまう。

「勝負、勝負ね。でも私、好きな人なんていないし、それに運動もオンチだしなあ」

困ったなーと力なく笑うが、利香の目は勝負に燃えている。