「……すまない。助かった」
「ううん。ね、油絵って事は美術部?」
雑巾でトントンと乾かしていると、その巨人がYシャツを奪った。
奪われたのに乱暴な印象はない。
照れ屋なぶっきらぼうな性格のようだ。
「俺は三年の野球部部長、近衛 響也(このえ きょうや)。朝部は美術部」
「わー。野球部部長! それっぽい……です。硬派な感じ」
年上だったのかと慌てて敬語で話すと、近衛の空気が緩んだような気がした。
くっきりとした太い眉毛に、鋭い眼光、黒い短髪にゴツゴツした長い指。
隣にいるだけで、張りつめた緊張でピリピリする。そんな威圧的な存在感がある男だ。
「朝部って何ですか?」
「ああ。部活を二個掛け持ちするだろ? 朝のHRを短くして朝に部活の時間がある。それが朝部。放課後に本命の部活をし朝に文系の部活動をしている。……逆に本命が文系の奴等は朝にスポーツだ」
「へぇ……」
「助かった。朝は野球部の朝練してから美術部に行くのだが……今日は油断して少しうたた寝してしまった」



