「紘那、顔は悪くないんだからさぁ…あ、中丸郁は?」 にやりと悪そうな顔をしながら紗乃は言う。 「えぇー、いくまる?ないわー」 中丸 郁(なかまる いく)は私の通う個別塾でいつも一緒に教えてもらうひとつ歳下の男の子だ。 確かに顔は可愛いけど、高校も違うし、そもそも歳下という時点で論外なのだ。 「私はいいと思うけどなぁ」 先日、塾の帰りにくだらないことで言い合いをしていたところを紗乃に目撃されたのだった。