東京の夜は虫の声の代わりに車の音が目立つ。
深夜の2時半を過ぎても車の量は減らない。
暖色のライトに照らされる澪君の横顔は、私が知っている澪君とは少し違って、なんだか新鮮だった。
「そういえばね、お風呂沸いてるんだ。
よかったら先に入って。汗かいたでしょ?」
気づくと澪君は立ち上がっていて、私を見下ろしていた。
「でも、澪君の方が汗かいてるんじゃ…」
ライブで踊って歌ってるんだもの。
見てるだけの私なんか比にならないくらいなはず。
彼は遠慮する私を笑い飛ばした。
「俺はライブ終わってすぐシャワー浴びてるから大丈夫だよ。あ、ちょっと待っててね」
澪君は廊下に出て行った。
ほんの数分後にまたリビングに戻ってくると、彼は私に何かを差し出した。
ふかふかのバスタオルと着替え。
これは…?

