「こんな時間に…どうしたの?」 そっと盗み見るように隙間から覗くと、黒いハットの男は私のすぐそばにまで来て私の前にしゃがみ込んでいた。 「寝過ごしました。」 素直に答える私。 「どの辺に帰るの?」 「群馬……」 私の声はだんだんと涙声になっていく。 迷子の子供とお巡りさんのやりとりみたいだ。 「群馬かぁ、それはちょっと遠いね。…どこか泊まる場所は?」 透き通った綺麗な声で彼は問い続ける。 「お金なくて…」