その時、私の手から雑誌が取り上げられた。
パッと顔を上げると、そこにはいくまるがいた。
いくまるは無造作に雑誌を棚に戻すと、「帰ろう」と言って、私の腕を引っ張った。
「まって、お会計!」
私はいくまるの手を振り払おうとした。
いくまるの手が振り払われる前に、私は買おうと思っていた雑誌もいくまるに取り上げられた。
適当な場所にぽんと置かれる。
「こんなの、買っても今日は読めないだろ…」
険しい顔をしたいくまるは、下唇を噛んだ。
まるで何かを堪えているかのような表情だった。
少し見方を変えれば、泣きそうな表情にも見える。
私はそんないくまるを見ていられなくって、ただ、頷くことしかできなかった。

