「なんかお前の本気モード、怖い」
塾の帰り道、いつもの流れで私の隣を歩くいくまるがポツリと呟いた。
初めは気まずかったいくまるとの会話も、随分と自然になっていた。
お互いにあの時のことは口に出さない。
「はぁ?なによそれ」
頬を膨らませる私を横目に、彼は満天の星空を見上げた。
「手届きそうじゃね?」
「無理だよ、いくまるちびだから」
背伸びをして星を掴もうと手を伸ばすいくまるに、私は笑みをこぼした。
やっぱりガキだ。
「あ、今日本屋寄りたい」
私は再び歩き出したいくまるに言った。
「だろうと思ったよ」
「知ってたんだ」
「毎月だとさすがに覚えるよ」
相変わらず無愛想ないくまるを追い越して、私は本屋に足を踏み入れた。

