黒いハットを被った背の高い男の人。 駅の時刻表を見ているのか、こちらに背を向けて立ち尽くしている。 タクシーか、いいな。 もう、いっそのことヒッチハイクではしごして帰ろうかな。 私はぼんやりとハットの男のグレーのジャケットを見つめていた。 私の視線に気づいたのか、男はくるりとこちらを振り返った。 私はぱっと目をそらしてベンチの上で膝を抱えて顔を伏せる。 泣き顔が不細工と紗乃によく言われるのを私はかなり気にしている。