「いいよ、食べ方なんて俺は気にしないよ。俺はどんな紘那も好きだし、それに、紘那はやっぱり笑ってなくっちゃ…ね?」
首を傾げて微笑む澪君に、私の顔は自然と綻んだ。
レストランの暖色のライトに照らされた澪君の指先が少し震えているのを、私は見逃さなかった。
きっと、澪君だって緊張してるんだ。
前菜もスープもメインディッシュも、澪君がご馳走してくれたものはみんな美味しかった。
強いて言えば、あのパスタは澪君が作ってくれたクルミのパスタの方が美味しかった。でも、美味しそうに食べる澪君を見ながらの食事は、いつもよりご飯を美味しくさせた。
澪君パワー、すごい。
それなのに、どうしてだろう。
澪君はさらにソワソワし始めた。
残りはデザートのみ。どうしてそんなに…?
私がフォークとナイフを縦に揃えてさらに置くと、すぐに店員が皿を下げに来た。
そして、
パンッッ
といい音を立てて、店内の電気が消えた。
「え、なに!?停電??」
あたふたと焦る私の視界に、 ぼんやりと赤い炎が揺れて見えた。
初めは火事かと思った。
でも、それにしては炎が随分と小さ過ぎる。

