テレビの向こうの君に愛を叫ぶ


昼食は澪君が事前に予約しておいてくれたレストランだった。
すごくおしゃれで高そうな雰囲気に、背筋がしゃんとなる。
周りを見ると、高そうな服に身を包んだ人達が、優雅にフォークとナイフを使いこなして食事をしている。
庶民の私なんかが到底似合うはずもない。
とんでもない場違いだ。

緊張してそわそわする私の前の澪君も、どうやら落ち着かない様子だった。
まさか、自分で予約しておいて緊張してるとか、ないよね。
もしそうだったら、とてつもなく面白いけど。


「すごいね、ここ。おしゃれ」


私はなんとかそう言った。
澪君は自慢気に鼻の下を擦ると、はにかんだ。
私もつられて微笑んだ。


注文もしていないのに、おしゃれに盛り付けられた前菜が運ばれてきた。

私は思わず息を呑む。

コース料理…。
これ、絶対高いやつだ…

私はこんな感じの料理をテレビで見たことがあった。
お母さんと一緒に値段見て驚いたっけな。


「わー、うまそぉ」


澪君はキラキラと目を輝かせながら料理を見つめる。
光を蓄えた綺麗な瞳が、私と料理を行ったり来たりした。
澪君は、ぼんやりと料理を見つめる私に、「早く食べよう!」と言って微笑んだ。
私は小さく頷いた。

普段はあまり使わないナイフとフォークを、懸命に操りながら料理を口に運んでいく。
以前、テレビで男の人は食事のマナーが悪い子に引くと言っていたのもあって、指先が妙に神経質になった。
皿の音が鳴らないように、ナイフとフォークが擦れ合わないように気を使う。


「ふははっ。紘那、ちょー緊張してるじゃん。眉間にしわ寄ってる」


なんでも顔にでるタイプの私のことだから、きっとすごく怖い顔で食べていたのだろう。
私はなんだか恥ずかしくなる。
田舎者がバレた気分。