テレビの向こうの君に愛を叫ぶ


「うわぁ、変な顔してる」


私と澪君はちょうど、この日3つ目のアトラクションである絶叫ものに乗った直後だった。
恐怖の絶頂を撮られた写真が映し出されたモニターを、私たちは手を繋いで見ていた。


「すごい、白目向いてるよ」


澪君は私の写真を見ながらお腹を抱えて笑う。
なんて失礼なんだ!


「さっきの澪君のしゃくれ顔には勝てないよ」


「それ引きずるなよぉ〜」


つつき合いながらくすくす笑う。
周りからはどう見えてるかな?
可愛いカップルをやれているだろうか。


「紘那、見て!俺のポーズ、決まってるでしょ」


袖を引かれて私は再びモニターを見上げる。
白目を剥く私の隣には、満面の笑みで通称春翔ポーズをする澪君の姿があった。


なんでこんなに楽しそうなの…笑


「これ、買えるみたいだよ。思い出に買ってく?」


澪君は、カウンターに書いてある説明書きを見ながら呟いた。


「えー、私白目向いてるし…」


私はそこまで言って黙り込んだ。
まじまじと見た画面の中に見つけてしまったのだ。
怖がる私の手をぎゅっと握る澪君の手を。
澪君が、いつもどこか私を気にしてくれていることを改めて感じた。


「やっぱり欲しいな、それ」


私はそう言い直した。


「白目向いてるのに?」


いじらしく澪君が笑う。


「いーの。澪君が可愛く写ってるから」


「ね?」と私は首をかしげた。
澪君は少し頬を赤らめながら、


「その仕草可愛くてずるい。東雲、ついつい甘やかしちゃう」


とかなんとか言いながら、結局写真代も払ってくれたのだった。