テレビの向こうの君に愛を叫ぶ


『ねえ、やっぱりそうだよ』


不意にそんな声が聞こえた。
若そうな女の人の声だった。


『えぇ?…でも女の人といるよ?』

『でもほら、声とか!友達の名前とかもShootingのメンバーと似てるじゃん!
…絶対、東雲澪君だよ、あの人』


嫌な汗が額に滲んだ。
背中が急に凍ってしまったかのように固まって動かない。


もしや、バレた…?


まずいまずいまずい。
私は澪君をちらりと盗み見る。

私が焦る一方で、彼はというと飄々とした態度で前を見ている。
果たして聞こえないのか、それともわざとなのか。
こういう時、私は澪君が分からない。


『声かけてみよっか』


1人が言った。
あぁ、まずい。
おしまいだ。


『あの』


呼びかけられて澪君は振り返った。


「何ですか」


私はぎゅっと目を瞑った。
しばらくの空白の時間。
やがて、


「ごめんなさい、人違いでした!」


慌てて謝る女の人の声が聞こえた。


え?……なんで?