『ねえ、やっぱりそうだよ』
不意にそんな声が聞こえた。
若そうな女の人の声だった。
『えぇ?…でも女の人といるよ?』
『でもほら、声とか!友達の名前とかもShootingのメンバーと似てるじゃん!
…絶対、東雲澪君だよ、あの人』
嫌な汗が額に滲んだ。
背中が急に凍ってしまったかのように固まって動かない。
もしや、バレた…?
まずいまずいまずい。
私は澪君をちらりと盗み見る。
私が焦る一方で、彼はというと飄々とした態度で前を見ている。
果たして聞こえないのか、それともわざとなのか。
こういう時、私は澪君が分からない。
『声かけてみよっか』
1人が言った。
あぁ、まずい。
おしまいだ。
『あの』
呼びかけられて澪君は振り返った。
「何ですか」
私はぎゅっと目を瞑った。
しばらくの空白の時間。
やがて、
「ごめんなさい、人違いでした!」
慌てて謝る女の人の声が聞こえた。
え?……なんで?

