「それで?何があったの」


紗乃は優しく私に問いかけた。


「この前…いくまるに告白されて、その場でちゃんと振ればよかったのに…驚いて返事できなかったの」


うんうんと紗乃が頷くのが視界の端に映る。
またあの嫌な感触を思い出して目元が熱くなった。


「今日、澪君が来てくれてて、さっき一緒に会ってた所をいくまるに見られちゃって……それで、キスされた」


最後の方は再びこみ上げてきた涙でにじんでしまった。
紗乃は、はぁっと大きくため息をつき、「強引だったね」と呟いた。


「私…正直、あいつのこと応援してたんだよね」


へらっと自嘲気味に笑いながら、紗乃は遠くの方を見た。


「だって、紘那の話を聞いてて、中丸はいいやつなんだなぁって思ったし、紘那がそんないい人と付き合えば、もう泣くことも無いだろうなって。
少なくともテレビの中でしか会えないような存在を追いかけるよりはマシだと思ってたよ。
でもさ、違ったね。」